災害時に診療どう維持 九州豪雨で被災の施設「業務継続計画」に課題

 九州を広範囲に襲った豪雨から、4日で1カ月。大雨特別警報が発令された熊本と福岡、鹿児島の3県では少なくとも約80の病院や診療所で浸水被害などが確認された。国は7年前から、全国の病院に災害時でも診療体制を維持するための業務継続計画(BCP)の策定を要請しているが、今回被災した医療機関の中には、策定したBCPの実効性が伴わなかったケースもあり、課題が改めて浮き彫りとなっている。(宇山友明、小松大騎)

 「想定外だったが、備えを万全にしていれば…」。浸水被害にあった球磨(くま)病院(熊本県人吉市)の上西大蔵(だいぞう)事務長はこう悔やむ。

 7月4日に発生した球磨川の氾濫で、7階建ての同病院の1階は2メートル近く浸水。策定していたBCPに従い、看護師長が現場責任者となって病院職員らに3~6階の入院患者約200人の安全確保などを指示した。人的被害はなかったが、1階にあったCTスキャンやレントゲンなどの検査機器は全て水没。貯水槽のポンプは損壊し、数日間は院内の各階へ水を供給することもできなかった。

 同病院は約8年前にBCPを策定。ただ、地震や火災を想定したもので、豪雨災害時の具体的な行動内容は定めていなかった。現在は外来診療を再開しているが、処方箋発行など限定的な業務にとどまっており、全面再開の見通しは立っていない。教訓を生かし、豪雨の際の各職員の具体的な行動を盛り込んだBCPを改めて策定する方針だ。

 熊本県などによると、今回の豪雨で県内の医療機関は30の施設で浸水被害が発生。福岡県では47施設、鹿児島県でも3施設に被害が出た。熊本と福岡では入院患者の診療が一時的に停止し、現在も再開できていない施設も複数ある。

 災害時、医療機関がどのように業務を継続するかは、過去の災害でも課題となってきた。

 厚生労働省によると、平成23年の東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県で医療機関が深刻な被害を受け、長期間にわたって影響が出た。これを受けて25年、厚労省は全国の病院にBCP策定を要請したが、2年前に行われた調査では、回答した全国の7294病院のうち、BCP策定済みは約25%にとどまっていた。

 なぜ、BCPの策定は進まないのか。東北大学災害科学国際研究所の佐々木宏之准教授はその要因を、「各病院にノウハウがなく、人手と費用を割けない」と指摘する。

 厚労省はBCP策定の「手引き」を公表しているが、地域事情や病院の規模で対応が分かれることから「一概には示せない」(担当者)と、明確な基準は示していない。球磨病院のように、BCPで豪雨対応を具体的に定めていなかったために実効性を欠いたケースについて佐々木准教授は、「BCPはあらゆる災害に対応したものにすべきだ」と指摘。「機材の故障などで病院の機能が停止することも想定し、診療継続のための代替案を事前に決めておくことなどが重要だ」と話した。

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