京アニ事件で犠牲 渡辺さんの「原点」が一堂に

 京都アニメーションが手がけたアニメ映画「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が好調だ。公開から1カ月(18日時点)で興行収入は14億5千万円を突破、観客動員数は100万人超を記録している。作品の背景責任者「美術監督」として携わったのが、昨年7月の放火殺人事件で犠牲となった一人、渡辺美希子さん=当時(35)。精巧で現実味あふれる画法で知られ、その原点ともいうべき作品が、三重県桑名市で展示されている。(秋山紀浩)

 青空の下に広がる草原や外国のような街並み…。展示会場には「ヴァイオレット-」の背景画や年賀状に描いたイラストなど約30点が並ぶ。その中で目を引く一枚の切り絵。背筋を伸ばして、横目で見る黒猫の姿を表現したもので、渡辺さんが14歳のときの作品だ。

 「大胆でシャープな構図に目を見張りました」。渡辺さんの大叔母で、展示会を主催する切り絵作家、土田節子さん(76)は振り返る。土田さんは、渡辺さんの母親に「絵のセンスがある」と伝えたという。

 土田さんによると、渡辺さんは高校卒業時にアニメの道を志望したものの、両親は将来の収入面を心配していったんは反対した。それでも渡辺さんは絵を描き続け、大学卒業時に、再びアニメの専門学校への進学を希望。両親は土田さんの言葉を思い出し、渡辺さんの背中を押したという。そして京アニに入社すると、「ヴァイオレット-」やアニメ作品「境界の彼方(かなた)」などで細やかな背景描写が魅力の作品の中枢を担った。

 そんな中、渡辺さんは事件に巻き込まれた。事件後、土田さんは約3年前の渡辺さんとの会話を思い出した。「仕事から離れたら好きな絵を描いて展覧会ができたらいいね」。土田さんは展示会の開催を決めたという。

 展示会には全国から多くのファンが足を運んでいる。土田さんは渡辺さんをしのびつつ、こう願う。「こんなにも愛されていたのだとうれしくなる。丁寧に作り上げられた美希子ちゃんの作品の一つ一つを、ぜひ見てほしい」

 展示会は31日まで、桑名市の「くわなまちの駅」で開催。入場無料。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ