日米安保5条の「焦点化」はリスク 急ぐべきは島嶼防衛強化

 マティス米国防長官が安倍晋三首相との会談で、米軍による日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の重要性を明言した。トランプ政権がオバマ前政権の方針を引き継ぎ、中国が領有権を不当に主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)が5条の適用対象となることを確認した形だ。米新政権の安保政策が不透明な中、日本政府にはひとまず安堵(あんど)感が広がっている。

 だが、そもそも米国で政権交代があっても、国家間の正式合意である条約の効力や義務は不変であり、そこに議論の余地はないはずだ。5条の有効性や適用対象が過度に焦点化すれば、むしろ日米同盟が持つ抑止力の安定性を損なう危険性をはらむのではないか。

 日本には苦い“トラウマ”がある。

 平成8年、当時のモンデール駐日米大使が「米軍は尖閣諸島の紛争に介入する日米安保条約上の責務は有していない」と語ったと米紙が報道した。これによって尖閣諸島をめぐる中国の活動を活発化させる素地を作ったとされる。

 24年に日本政府が尖閣諸島を国有化すると、中国公船による領海侵入などが本格化した。日本は尖閣への関与の確認を米側に働きかけるようになり、26年4月にはオバマ氏が歴代米大統領で初めて、尖閣が日米安保条約の適用対象となることを表明した。

 中国は現在も尖閣諸島の領有権を不当に主張し、周辺海空域での挑発行動を続けている。昨年6月には中国艦が初めて接続水域に入域。軍用機が尖閣方面に南下し、自衛隊機に接近する事案もあった。尖閣をめぐる緊張が増すなか、予測困難なトランプ政権の誕生を受け、米軍の尖閣防衛義務を改めて確認することに意味があるのは確かだ。

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