野党共闘への布石 ご即位を受け入れる共産党の深謀遠慮

 【野党ウオッチ】

 共産党が「令和」改元に伴う祝賀ムードを静かに受け入れ、現実路線をアピールしている。天皇陛下が即位された1日には志位和夫委員長が談話で祝意を示し、9日の衆院本会議でも即位に祝意を示す「賀詞」に賛成した。党綱領に「民主共和制」の実現を掲げ、究極の目標として皇室制度のない社会を目指す同党に何が起こっているのか。

 ■野党共闘への布石

 「天皇の制度は憲法上の制度だ。この制度に基づき、新しい方が天皇に即位するということだから祝意を示すことは当然だ」

 志位氏は9日、衆院で賀詞に賛成した理由をこう語った。

 同日の衆院本会議では、大島理森衆院議長が「賀詞」を読み終えると、志位氏は起立したまま拍手で賛意を示した。1日に発表した談話では「新天皇の即位に祝意を表します。象徴天皇として、新天皇が日本国憲法の精神を尊重し擁護することを期待します」と明確に祝意を示し、永田町に驚きが走った。

 共産党は、平成の御代替わりの際は賀詞に反対したが、志位氏は会見で「当時の綱領が『君主制の廃止』を掲げており、2004(平成16)年の改定で考え方を変えた。現行憲法の天皇の条項も含めて、全ての条項を守っていくという立場だ」と説明した。

 共産党の現実路線は今に始まったことではない。平成28年夏の参院選で、旧民進党など他の野党と統一候補を擁立するのに合わせるかのように、同年1月の通常国会では 当時の天皇陛下がご臨席される開会式に、事実上初めて出席した。自由党の小沢一郎代表(当時)ら他の野党幹部のアドバイスも受け、共闘に向けた垣根を少なくする意味も込め出席を決断したという。

 実際、同年の参院選では勝敗を分ける32の改選1人区すべてで統一候補が実現し、うち11選挙区で野党が勝利した。

 共産党は今夏の参院選でも改選1人区で野党統一候補を擁立し、前回以上の成果を出したい考えだ。しかし、立憲民主党幹部は「天皇陛下に対する認識を改めてもらわなければ、参院選で無党派層からの理解は得られない」と語る。

 同党は大正11年に非合法組織として結成されたが、平成16年に採択した新綱領では「君主制廃止」の表現を削除した。

 「令和」改元に伴う一連の動きは、現実路線をさらに一歩進めた形だ。同じ立民幹部は「夏の参院選で野党共闘を深化させるため、天皇陛下の即位と改元に伴う一連の行事を利用すべきだとの判断が働いたのではないか」と分析した。

 最近の共産党は、参院選の野党共闘態勢をいかに整えるかに最も力点を置いているようにみえる。

 4月21日に投開票された衆院大阪12区補欠選挙で、共産党は現職だった宮本岳志氏を辞職させ、無所属候補として擁立した。党中央委員でもある宮本氏をあえて無所属にしたのは、疑似的な野党統一候補を演出するためだ。

 同党幹部は「4月の統一地方選前半戦の勝利がホップ、宮本氏の衆院大阪12区補選への出馬がステップ、そして夏の参院選でジャンプする」と語ったが、補選で宮本氏は出馬した4候補中最下位に敗れた。

■ブレた姿勢で有権者離反?

 何よりも党に衝撃を与えたのは、29年衆院選で同区の共産党候補は約2万2800票を集めたが、今回の補選では約1万4000票と8800票も減らしたことだ。野党関係者は「共産党のブレた姿勢が無党派層で左派にシンパシーがある有権者の離反を招いた」と分析する。さらに、秋波を送った立憲民主党や国民民主党からは全面的な支援を得られず、参院選の前哨戦として演出したかった野党共闘も事実上、失敗した。

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12両日行った合同世論調査では、天皇陛下に「親しみを感じる」との回答は80・8%で、「親しみを感じない」の12・3%を大きく引き離した。皇室制度についても「今の象徴天皇のままでよい」との回答が86・9%で、「天皇制は廃止した方がよい」は6・4%にとどまった。

 共産党関係者は「国民の大多数が令和改元を歓迎するなか、天皇を真っ向から批判しにくい雰囲気があった」と明かす。

 3年後に結党100年を迎える共産党だが、党歴と同様に党員の高齢化も進み、入党者も減少している。同党はコアな支持層だけでなく、左派に理解がある無党派層への支持を浸透させなければ党勢回復は見込めない。

 無党派層への支持拡大をもくろむ共産党にとって、「令和」改元祝賀ムードにはあらがえず、皇室制度に関しても静かに受け入れざるを得ない苦しい事情が垣間見える。(政治部 千田恒弥)

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