静岡県知事「工事ゴーサイン出せぬ」 リニア新幹線の建設予定地視察

 静岡市葵区の南アルプス地下を貫通するリニア中央新幹線をめぐり、川勝平太知事と関係者は建設予定地や準備工事の現場を13日に視察した。静岡工区(延長約8・9キロ)では、トンネル工事による大井川の流量減少を懸念する県や利水者団体とJR東海の間で協議が続き、本体工事に着手できておらず、関係者の間に焦りが生じ始めている。川勝知事は視察後に「とてもじゃないがゴーサインは出せない。(JR側から)納得できるものが返ってこない限り、本体工事には入れない」と述べ、改めてJR側に地元の理解を得るまで丁寧な説明を行うよう求めた。

 川勝知事は11日の定例会見で同社のこれまでの対応を「会社が立てた事業計画を金科玉条のごとく相手に押しつけるのは無礼千万だ」と批判していた。しかし、リニア沿線の自治体からは令和9年開業の遅れにつながりかねない静岡工区の着工遅れに対する不満や国による調整を望む声が上がり始めており、水問題を旗印にJR側と協議を続ける本県は難局に立たされているといえる。

 13日の視察には川勝知事のほか、大井川の利水者団体の代表、県が設置した専門部会の委員ら約25人が参加。JR東海は宇野護副社長らが説明役を務めた。

 一行が最初に視察したのは、準備工事として事務所や作業員宿舎の建設が始まっている南アルプス山中の椹島(さわらじま)地区。導水路トンネルの建設予定地や大井川の護岸工事の現況も見学した。その後、さらに山間部の千石地区に移動し、土砂置き場や作業員宿舎建設予定地、工事用道路入り口の計画地などを視察した。

 2地区の視察を終えて取材に応じた川勝知事は、今のところ本体工事に着手できる状況にないとの認識を示し「JRには速やかに利水者が安心できるような回答を寄せてほしい」と注文を付けた。

 一方で同社の宇野副社長は「環境に配慮しながら(工事を)やっていることは確認してもらえたのではないか」と応じ、「準備工事も終盤戦。できれば引き続きトンネル工事が進められるよう、静岡県と話し合いたい」と望んだ。

 また、沿線他県に国の調整を望む声があることについて、川勝知事は「リニアは国策だというが、とんでもない。国が認可して後押ししていることは知っているが、JRが社運をかけて乗り出した大事業であり、JRが決めたこと」と指摘。リニア新幹線はあくまでもJR東海の事業で、当事者である同社が県や地元と協議すべきだとの認識を強調した。

 これに対し、宇野副社長は「事実として整備計画を作ったのは国であり、必要だと指示したのも国。国が計画してJR負担でつくるということだ」と、異なる見解を示した。

 県側と同社との関係は、同社が3月、トンネル湧水の全量を大井川に戻した上で、湧水量が毎秒3トンを超えれば工事を中断するなどの対応を約束したことで修復に向かっている。ただ、県は依然として同社に「誠意ある対応と県民に分かりやすい丁寧な説明」を求めており、本体工事着手に必要な地元と同社との協定は結ばれていない。

 南アルプス山中では昨年9月から、大幅な環境の改変を伴わない準備工事が始まっている。椹島など3地区には来年中にも作業員宿舎が完成する予定。一部宿舎については工事終了後に観光用の宿泊施設に転用することも検討されている。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ