自民党・岸田文雄政調会長 正念場の1年“ポスト安倍”の鍵握る 「内政、外交の政策ビジョンの作成」

政界マル秘紳士録

 「大切な仲間4人の同志を落選させてしまった。誠に残念で断腸の思いだ。誠に申し訳ない」「選挙の借りは選挙で返すという覚悟で、しっかりと総選挙に向けて一致結束、努力していかなければならない」

 自民党の岸田文雄政調会長は参院選後の7月25日、岸田派の会合で、自身を鼓舞するように、こう訴えた。

 岸田氏が参院選で「ミソ」を付けたのは事実だ。だが、このことだけで「ポスト安倍」候補から脱落することはないだろう。

 なぜならば、「『ポスト安倍』の最有力候補は安倍晋三首相」といわれるほど、後継者不足が深刻だからだ。そうした中にあって、外相を4年8カ月務め、政調会長も順調にこなす岸田氏の存在はやはり大きい。

 少なくとも現時点においては、岸田氏は、菅義偉官房長官と並び、「最有力」の次期首相候補であることは間違いない。

 岸田氏は昨年の総裁選で、出馬せず安倍首相の支持に回った。当時、「飛べない男」などと揶揄(やゆ)されたが、結果としては良かったのではないか。当時の岸田氏は、首相として政権を運営していくには、さまざまな面で準備不足であった。仮に首相になっていたとしても、うまくいかなかった可能性が高い。ちょうど、第一次安倍内閣でそうであったように、である。

 気になるのは「安倍4選論」の行方である。

 党則上、再来年9月までとなっている安倍首相の自民党総裁としての任期を、さらに4年延期するというのは、さすがに受け入れられないだろう。

 では、安倍首相がそれまでに解散・総選挙を行い、それに勝利した場合にどうするか。自民党には中曽根康弘政権時代、1年間の特例延長した例がある。しかし、この場合も「大勝利」が前提であって、長期政権に伴う「飽き」が広がりつつある安倍首相にとって、あえてリスクを冒す必要なしと考える可能性も低くない。

 いずれにせよ、岸田氏がやらなくてはならないのは、「内政、外交の政策ビジョンの作成」である。

 かつて宏池会出身の首相である池田勇人は「所得倍増論」を、大平正芳は「田園都市構想」を、宮沢喜一は「生活大国論」をそれぞれ唱えた。これらは首相に就任する前から、内外の英知を結集して研究、議論しながら練り上げたものであった。

 国民が見たいのは、岸田氏らしい温厚でバランスの取れた考え方に裏打ちされた政策だ。「岸田政権ができれば、こんな政治になる」というイメージが国民に定着できれば、自然と「岸田待望論」が沸き起こってくるのではないか。

 また、その過程を通じて同志やブレーンが形成されていくことにもつながる。同時に政権の骨格となる人材を見いだすことだ。安倍首相の足りない部分を補う麻生太郎副総理兼財務相、菅長官、二階俊博幹事長、岸田氏のような政権を支える人材である。

 安倍首相から禅譲をされる形で政権を取るのか、それとも戦い取るのか。今度は「飛ばない」わけにはいかない。岸田氏にとって、この1年が正念場となるだろう。(政治評論家・伊藤達美)

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