尖閣、豪雨、コロナ…海保が体制増強で同時対応

 中国海警局の船の活動が過去最長の連続100日になった尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺は、海上保安庁が最重要の「一丁目一番地」として24時間体制で警備を続けている。ただ、海保は今夏、尖閣以外にも豪雨被災地の救援、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)周辺の中国海洋調査船監視などの重要任務に直面。その最中には尖閣対応巡視船で新型コロナウイルスの感染者が発生した。複数事案への同時対応を可能にした背景には、海保が進めてきた体制強化がある。

 「業務への影響は一切生じていない」。海保の奥島高弘長官は15日の記者会見で、厳しい巡視船運用を迫られる複数事案への同時対応について、こう強調した。運用に余力を残せた理由の一つには近年、最大級の6500トンや6千トンのヘリコプター搭載大型巡視船(PLH)の建造を進めてきたことが挙げられる。

 海保は平成24~27年度、第11管区海上保安本部(那覇)に巡視船12隻の尖閣領海警備専従体制を構築。28年12月に尖閣警備と大規模事案の同時対応を掲げた「海上保安体制強化方針」を策定した。

 海保が保有する6500トン型PLHは尖閣国有化翌年の25年以降、2隻だったが、同方針の元で整備した6500トン型PLHが今年2月に就役。同時期に6千トン型PLHも1隻増やして2隻にした。PLHの建造ラッシュは続き、6500トン型2隻が今年度と令和3年度、6千トン型2隻が5年度の就役を予定、大型化する中国公船への対処も見据えている。

 尖閣周辺は領海外側の接続水域を含めると四国ほどの広さがある。中国公船は4隻で活動することが多く、海保は専従船を交代で運用するほか、他管区から6500トン型PLHや6千トン型PLHなどを指揮船として派遣。「中国側を上回る勢力で対応している」と説明しており、中国公船1隻に巡視船1隻が対応し、周辺海域に巡視船を点在配置しているとみられる。

 尖閣での警戒監視を続けていた7月上旬、海保に新型コロナウイルスの影響が及んだ。3~5日にかけて修理で鹿児島入りしていた尖閣専従船と、尖閣にも派遣される10管(鹿児島)の6500トン型PLH2隻の乗組員計3人の感染が判明した。

 同時期には九州南部で豪雨災害が発生。4日に巡視船艇20隻近くを投入、7日からは感染者を出した船とは別の6千トン型PLHが給水支援に入った。また、太平洋にある日本最南端の沖ノ鳥島では9日以降、中国海洋調査船が無断で調査を継続。3管(横浜)の大型巡視船が監視に当たった。

 一連の対応は、尖閣専従体制で効率的に巡視船を運用するため導入した複数クルー制も奏功した。新型コロナ感染者を出した専従船では周囲の乗組員が濃厚接触者になり、2週間の隔離を余儀なくされたが、別のクルーが鹿児島に入って1週間程度で船を動かした。

 日本海では、日本の排他的経済水域(EEZ)にある好漁場「大和堆(やまとたい)」に5月下旬から巡視船を派遣。スルメイカを狙って出没する北朝鮮漁船への警戒を続けている。

 海保幹部は「尖閣をはじめ、現場に向かわせる巡視船が足りなくなるという事態は絶対に避けなければならない。新型コロナの感染者をこれ以上出さないようさらなる注意を払いながら、警備に万全を期したい」と話した。

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