「申し訳ない」「もう少し頑張る」拉致被害者家族、横田滋さんにお別れ 

 遺影の中に、変わらぬほほえみがあった。24日、北朝鮮による拉致問題解決を求める国民大集会に先立ち開催された横田めぐみさん(56)=拉致当時(13)=の父、滋さん=6月に87歳で死去=のお別れ会。「申し訳ない」「もう少し頑張る」。拉致被害者家族会の初代代表として長年、全国を駆け回り、救出運動の「象徴」ともされた滋さんに、関係者はそれぞれの思いをささげた。(中村翔樹、橘川玲奈)

 「私たちは普通の家族で主人は家族を大切にする普通の父親でした」。あいさつに立った妻の早紀江さん(84)は滋さんをしのび「仲の良い親子だった。みんなが朗らかに、楽しく、元気で成長してくれることだけを願っておりました」と振り返った。

 花に囲まれ、ほほ笑む滋さんの遺影を前に約300人の参列者は次々と献花。場内のスクリーンに、幼いめぐみさんを抱く滋さんの姿などが映し出された。

 田口八重子さん(65)=同(22)=の兄で、平成19年に滋さんから家族会代表を引き継いだ飯塚繁雄さん(82)は「『お父さん、ただいま』『おかえり、めぐみ』。この言葉を何年待ったことでしょう」と無念さをにじませた。

 スクリーンには9年、家族会が結成を発表した記者会見の写真も映った。結成当初から参加する神戸市の有本恵子さん(60)=同(23)=の父、明弘さん(92)は滋さんの遺影を前に「わしはもう少し、頑張るわ」と告げた。

 明弘さんは、全国の集会などの予定でぎっしり埋まった滋さんの手帳が記憶に刻まれている。当初は「嘘」や「疑惑」とさえ断じられた拉致事件の解決を訴え愛娘の救出を切望する滋さんの姿は共感を呼び、救出運動はうねりとなった。

 今年2月、明弘さんも妻の嘉代子さんを94歳で亡くし、自身の体調も思わしくない。「よう、やったと思う」。寂しげに滋さんをねぎらい、「あと半年でも1年でも、やれる限りはやるで」と決意を語った。

 市川修一さん(66)=同(23)=の兄で、鹿児島県に住む健一さん(75)も家族会結成からのメンバーだ。地元の学校で講演し、地道な署名活動に取り組む。自らも老い、共に闘った家族の死去は重い現実だ。「政府も、あらゆる手立てを考慮して行動してほしい」と吐露した。

 増元るみ子さん(66)=同(24)=の弟、照明さん(65)は「横田夫妻がいなければ拉致問題はここまで動かなかった。めぐみさんとの再会をかなえられず、本当に申し訳ない。『これから、われわれ国民が強い行動に出て動かしていきます』と誓った」と語り、政府に対しても「覚悟が足りない」と奮起を求めた。

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