初代・若乃花の哲学は「包帯は逆の手足に巻け」だが… 依然、痛々しいテーピング姿の稀勢の里

 先場所終盤、痛めた左胸から肩にかけて施されたテーピングを見て驚かれたファンも多かったことだろう。

 千秋楽の優勝インタビューで、稀勢の里は「こうならないのが一番いいけど、ケガをしたのは自分だから。痛み? ご想像におまかせします」と痛々しい姿を満天下にさらしてしまった自分を責めたが、もし育ててくれた先代師匠(元横綱隆の里)が生きていたら、何と言っただろうか。

 土俵上では包帯やサポーターをするな。これは先代師匠のそのまた師匠、“土俵の鬼”と呼ばれた元横綱初代若乃花(二子山理事長)以来の土俵哲学だ。初代若乃花は、弟子たちがたとえ稽古場でも手や足に包帯を巻いているのを見つけると、こう言って叱った。

 「そうやっていると、私はここが悪いんです、どうかここを攻めてください、と相手に教えているのと同じじゃないか。どうしても巻きたかったら、逆の手や足に巻け」

 先代師匠もこの教えを守り、絶対に自分の弱点を人前では明かさなかった。

 横綱に昇進する前後、先代師匠は出番が近づくと、決まって周りを数枚の大きなバスタオルで囲んだ中に閉じこもった。その囲みぶりがあまりにも異様で秘密めいていたため、こんなウワサが立った。

 「隆の里は興奮剤を使用している」

 しかし新横綱で全勝優勝した後、先代師匠はやっとこの謎の行動の真相を打ち明けた。

 「実は血糖値を測っているんだ。大関時代に低血糖状態で土俵に上がって相撲にならなかったことがあった。低かったら糖分を取り、高かったら体を動かしてから花道に向かうんだ」

 稀勢の里の場合はもう、左肩などを痛めていることは公然の秘密。9日に尾車部屋で行われた二所ノ関一門の連合稽古では初めて三役の嘉風や琴奨菊らと稽古し、「動きは悪くない」とこれまで以上に手応えを感じた様子だった。

 しかし、左胸や腕はまだしっかりとテーピングされたまま。これがあるとないとでは相手の印象や、見た目の美しさも違ってくる。稀勢の里は初日までにテーピングを外す勇気を見せるか。 (大見信昭)

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