稀勢の里、「左」で阿武咲斬り 大相撲

 注目の対決は0秒7であっさり決着した。稀勢の里は左足から踏み込み、左でおっつける。すると気負い過ぎたのか、阿武咲は足が滑って前のめり、両手をついた。3場所連続休場明けで不安を抱える“左”から攻めてつかんだ白星。「よかったんじゃないか」と表情を緩めずに語った。

 昨年6月21日。名古屋場所の番付発表をおよそ1週間後に控え、稀勢の里は単身付け人も連れず、この時期としては異例の出稽古で阿武松部屋を訪れた。目当ては当時19歳の阿武咲。十両から幕下へ落ちていた新鋭にわざわざ胸を出したのは自分の稽古のためだけではなく、それほど期待を寄せているからだった。

 15番取り、持てる全ての力をぶつけてくる阿武咲の攻めを受け止め、稀勢の里は感嘆するように語っていた。「いいものを持っている。あいつはすぐに幕内へ上がって来るよ」

 1年後、たしかに幕内へ昇進した阿武咲は言う。「あのとき稀勢関に稽古をつけてもらったおかげで今の自分がある」。新小結の今場所。あこがれの存在へ初挑戦が決まり「本当に楽しみ。勝って恩返しをしたい」と燃えていた。

 一瞬で勝負がついた初対戦だが、結果的には横綱が勢いに乗る若手を退け、連敗は免れた。いいきっかけとできるか。稀勢の里は「また明日しっかりやるだけ」と力を込めた。(藤原翔)

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