「レッドライン=化学兵器使用」で対応分かれたオバマ米前政権とトランプ氏 「力の空白」埋めたイスラム国

 「アラブの春」と呼ばれた2011年の民主化運動はシリアにも及び、弾圧するアサド政権と反体制派の間で内戦に陥った。反体制派を後押しするオバマ前米大統領が軍事行動をためらい、外交解決にこだわったことで生まれた「真空」(トランプ米大統領)を埋めたのは、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)だった。

 オバマ氏はアサド政権に対して「レッドライン(越えてはならない一線)」を宣言しながら、13年のアサド政権による化学兵器使用疑惑にも関わらず軍事行動を見送った。

 ロシア、イランがアサド政権、米国が反体制派をそれぞれ支援する構図は、14年6月、シリア北部ラッカを“首都”にイスラム世界を治める「カリフ」復活を宣言してISが台頭したことで複雑化した。ISは内戦下のシリアや米軍完全撤退後のイラクに生まれた「力の空白」を突く形で、外国人戦闘員を集めて勢力を拡大していった。

 米国は14年9月から地上で戦う反体制派を支援してIS掃討を目指すために空爆を開始したが、米軍が反体制派に訓練を施してISと戦わせるというオバマ政権の計画は実際にはほとんど機能していなかったことが判明した。

 その一方で、15年9月にロシア軍がシリアでの空爆を開始し、軍事介入を強めるとアサド政権軍が優勢に戦いを進めるようになった。昨年末にはロシアとトルコの仲介によるアサド政権と反体制派の休戦協定が発効するなど、ロシアの存在感が強まっている。

 トランプ政権はアサド政権の退陣にこだわらないとしていたが、化学兵器使用疑惑で将来的な退陣を求める方針に転換。アサド氏の処遇をめぐり、米露関係の緊張が予想される。(ワシントン 加納宏幸)

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