シリア情勢 「ポスト・イスラム国」見えぬ展望 米とイランが攻撃、内戦に直接関与

 米国とイランがシリア国内への直接的な軍事攻撃に踏み切ったことで、内戦をめぐる情勢はさらに複雑になる見通しが強まった。両国はイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の打倒では一致しているが、アサド政権の扱いをめぐって鋭く対立している。「ポストIS」の統治形態をめぐる駆け引きにも大きな影響が出そうだ。

 シリアのアサド大統領はイスラム教シーア派に分類される国内少数派アラウィー派の出身で、シーア派大国のイランはアサド政権存続を目指して支援してきた。同じく政権を擁護するロシアも16日、IS指導者のバグダーディ容疑者を空爆により殺害した可能性があると述べたばかりで、内戦での主導権確保に向けたアピールをしている。

 内戦では今月6日、米軍の支援を受けるシリア民主軍(SDF)が、ISが「首都」だと宣言した北部ラッカへの進攻開始を宣言。米軍機がアサド政権軍の戦闘機を撃墜したタブカは、ラッカの西約50キロに位置しており、作戦が山場にさしかかっていることを示している。

 米・イラン両国が内戦への関与を深めたことで、IS打倒後のシリアの統治体制はいっそう不透明になった。トランプ米政権は「テロ組織を支援している」とイランを非難し続けており、内戦終結後の体制を協議する事態は到底、想定できない。米露関係も冷却化しており、互いに譲らなければ内戦がさらに激しくなる恐れもありそうだ。

 不安定要因はほかにもある。米国とトルコの隔たりだ。SDFはアラブ人の民兵部隊と、少数民族クルド人の軍事組織で構成されており、ラッカ攻略を目指す米軍が支援してきた。一方、シリアと国境を接するトルコは、クルド人部隊は国内の非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)の「分派」だとして米国の姿勢を批判している。

 イラク北部モスルでも、イラク軍などが残る旧市街への突入作戦を開始したが、IS排除後もシーア派主体の現政権側とスンニ派、クルド人勢力の3者の対立の再燃が懸念される。シリアもイラクも、「ポストIS」の受け皿作りが急務のはずだが、その機運に乏しいのが現状だ。(カイロ 佐藤貴生)

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