北ミサイル 専門家に聞く「トランプ氏は北と直接取引へ」「弾頭小型化はめどついた」

 北朝鮮が4日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の「火星14」。北朝鮮は「核戦力完成のための最終関門」に成功したと発表したが、専門家らは核ミサイル開発が今後も引き続き進められると声をそろえる。北朝鮮問題に詳しい武貞秀士・拓殖大大学院特任教授と香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官に話を聞いた。(聞き手 時吉達也)

     ◇

 ■武貞秀士・拓殖大特任教授 

 北朝鮮は韓国と国家成立の理念が違う。韓国は日本統治下で独立を目指した「三・一運動」を朝鮮総督府の官憲に阻止された悔しさが根本にある。だから国家としてあらゆる面で日本に勝つことを求める。一方で北朝鮮は「金日成が抗日闘争で祖国を解放した」経験を建国理念にしており、憲法が強調するのは「抗日」ではなく「統一」だ。

 北は現在も、韓国という国家は存在せず「米国の植民地下にある」と考えている。南北統一を実現すれば北朝鮮の究極目標を実現したことになり、正統性を証明することになる。

 それを米国に「邪魔」されたのが、朝鮮戦争だった。以降、北朝鮮は米国の介入を阻止して統一を果たすことを最終目標として、核ミサイルの開発に着手した。中露も核拡散を警戒していたが、ソ連崩壊後に技術が流出してしまった。

 核兵器を持てば統一できるのだろうか。三代にわたる金王朝は、それが可能だと考えてきた。米首都に届くミサイルを開発すれば、米国は朝鮮半島への軍事介入を回避する。米朝不可侵協定を締結して在韓米軍を撤退させ、核保有国として有利な立場で韓国との統一交渉に臨むことができる、というのが北朝鮮の計算だ。

 開発目標は、ICBMにとどまらない。大西洋に潜ませた潜水艦からワシントンを狙う弾道ミサイル「SLBM」についても、開発を急ぐだろう。

 国際社会が核廃棄を前提とした協議開始を求めるのは難しい段階に入った。対北圧力強化の見返りに中国の「為替操作国」認定を棚上げにしたように、トランプ米大統領は早晩、北朝鮮と直接の「ディール(取引)」を始めるだろう。日本が取り残される前に、具体的な北へのアプローチを模索するべきではないか。

     ◇

 ■香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官

 火星14は距離を通常より高い角度にして、飛行距離を短くする「ロフテッド軌道」で打ち上げられた。ロフテッドについて、北朝鮮は「周辺諸国の安全を考慮した」と説明し、日本でも「米国を刺激しない目的だった」などと報じられている。しかし、実際には核ミサイルの開発進展に必要な再突入技術のデータ採取を狙ったものだ。

 ICBMは宇宙空間に上がった後、マッハ24の高速で大気圏内に再突入するため、弾頭が7000度超の高熱にさらされる。ICBMの最後の難関ともされる再突入技術を確立するため、実験を繰り返し詳しいデータを記録する必要がある。

 しかし、地球は丸いため、一定以上の距離に落ちると、北朝鮮から落下状況の確認が難しくなる。例えば2500キロ先に発射した場合、大気圏内に再突入する高度100キロ以下の状況が確認できない。微妙に条件を変えながらロフテッドの実験が繰り返されるのは、政治的な配慮からではなく、あくまでもデータの積み重ねを目指すものだ。

 北朝鮮は、2016年からロフテッドによる実験を開始した。これは、もう一つの技術的な課題である「弾頭の小型化」に一定のメドがついたということを意味している。15年まではミサイルの距離を伸ばし、脅威を強調するだけでよかったが、核弾頭の搭載を考慮する段階に入ったために大気圏再突入に必要なデータを取り始めた。

 今回のミサイルは試作1号機であり、今後3~5発程度は同型の発射が予想される。軍の立場では、金正恩(キム・ジョンウン)氏に命じられてICBMを発射し、失敗すれば懲罰を受けるため、ミサイルの精度を高めることが必要だ。ロフテッドと、飛行距離を伸ばしたものを交ぜて実験が繰り返されるだろう。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ