同盟傷つけるトランプ氏の制裁の稚拙

 【湯浅博の世界読解】

 政治家が自らを「取引の天才」と自賛する言葉を信じる人はまずいない。そのトランプ米大統領が、中国をターゲットに鉄鋼・アルミニウムのダンピング(不当廉売)に高関税をかけると表明したときには、「あの予告は本当だったか」と驚いた。

 なぜなら、昨年11月の米中首脳会談で、どこか不自然な大統領による賛辞のウラで、トランプ氏が着実に督促の布石を打ってはいたことが分かったからだ。

 トランプ氏の訪中は、まるで戴冠式を終えた中国皇帝が、賓客から祝賀を受ける儀式のようだった。習近平国家主席はそれに先立つ10月の共産党大会で、共産主義国家樹立から100年目の2049年までに中華民族が世界で「そびえ立つ」と宣言したばかりだ。

 だがこの間に、本国ワシントンは冷戦終結してからは使われなくなっていた貿易上の対中対抗措置をひそかに準備していた。

 この頃の米紙ウォールストリート・ジャーナル(昨年11月14日付)に、首脳会談に冷水を浴びせるコラムが掲載されていた。コラムニストのアンドリュー・ブラウン氏が、中国の鉄鋼、アルミのダンピングへの対抗策として、国家安全保障上の懸念を持ち出す手を詰めていると書いた。

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