「トランプ氏の決断は正しい」WSJ紙

【環球異見・米「INF」条約の破棄表明】

 米国のトランプ大統領が、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する方針を示した。米国と旧ソ連が1987年に締結した同条約は、軍縮路線への大きな転機だった。米紙は、条約に違反したロシアを批判してトランプ氏を擁護。露紙は新たな軍拡競争を危惧する一方、ロシアにとっての「メリット」を挙げた。東西冷戦の最前線だったドイツでは、欧州が再び核対峙(たいじ)の舞台となることに不安が上がっている。

「トランプ氏の決断は正しい」ウォールストリート・ジャーナル(米国)

 トランプ米大統領によるINF全廃条約からの離脱表明に「新たな軍拡競争につながる」などと国内外から批判が出ていることについて、米紙ウォールストリート・ジャーナルの10月23日付社説は、「無謀な行為をしているのはトランプ氏の方なのか」と問いかけた。その上で、過去10年間にわたって条約違反を繰り返してきたロシアに対し、厳然とした政策を打ち出した同氏を支持した。

 東西冷戦末期の1987年に米国と旧ソ連が締結したINF条約は、射程500~5500キロの地上発射型の弾道・巡航ミサイルの開発と配備を禁止した。

 社説は「(冷戦を経て)世界を平和にしたのは軍縮ではなく、ソ連の崩壊だ。軍縮は仲良く付き合える国同士では概して機能するが、信頼できない敵同士の場合は失敗する」と指摘する。

 ロシアは2000年代半ばから新型の地上発射型巡航ミサイル(GLCM)の開発を進めていたが、オバマ前政権は、10年にロシアとの間で締結された新戦略兵器削減条約(新START)の上院での批准を実現させたい思惑から14年までこの情報を公表しなかった。結局、ロシアは16年に同ミサイルの配備を開始。社説は「ロシアの違反行為に沈黙し、舞台裏で条約順守を働きかける手法は奏功しなかった」と批判した。

 その上で、米国はINF条約から離脱することで「ロシアの脅威に対抗可能なミサイルを開発し、欧州方面での相互抑止力を回復できる」と強調。「INF条約の当事国でない中国は独自の中距離ミサイルを開発し、米海軍への脅威となっている」とも述べ、「米国しか順守していない条約のために中国への対応で手を縛られてはならない」と訴えた。

 社説はまた、新たな軍拡競争をもたらしているのはプーチン露大統領であり、「欧米諸国がロシアと争うのを避ければ終わるという単純なものではない」と喝破した。(ワシントン 黒瀬悦成)

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