トランプ大統領、再選へ露骨な「イスラエルシフト」 ユダヤ票の取り込み狙う

 【緊迫する世界】

 ドナルド・トランプ政権が誕生して3年目になるが、世界はますます混沌としている。トランプ大統領自身は、ロシアゲート疑惑で「シロ」と判断されて、2022年の大統領再選へ向けて本格的に始動した。

 トランプ政権の最大の特徴は露骨な「親イスラエル政策」である。4月9日にイスラエルでは総選挙が実施され、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が5期目の再選を果たした。それをサポートしたのがトランプ氏である。

 トランプ氏は3月21日、シリア南部のイスラエル占領地ゴラン高原に対するイスラエルの主権を認める文書に署名した。昨年5月には、イスラエルの米大使館をエルサレムに移転している。加えて、イランに強い圧力をかけて、オバマ時代に発展させた核合意の転覆を図っている。

 ウィリアム・バー司法長官は3月24日、「トランプ氏やトランプ陣営がロシアと共謀した証拠はない」と連邦議会に報告し、ロシアゲート疑惑は終了した。

 トランプ氏は昨年11月、疑惑を遅々として終わらせないジェフ・セッションズ司法長官を更迭した。後任として、正統派ユダヤ教と密接な関係を持つ、バー氏を同12月に司法長官に指名した。バー氏にとって初めての大きな仕事がロシアゲートの終結であった。この関係のなさそうに見える、2つの事柄は関連しているかのようだ。

 米国におけるユダヤ人の政治的影響力は大きい。

 トランプ氏の娘、イヴァンカさんは、夫のジャレット・クシュナー大統領上級顧問とともに正統派ユダヤ教徒である。投票や政治資金を通じて、大統領選や議会選挙を左右する。米国は、イスラエルに次ぐ最大のユダヤ人居住国家(=イスラエルのユダヤ人は約543万人、米国約513万人)である。ユダヤ人は、米国の全人口の約1・7%しか占めないが、イスラエル支持のキリスト教福音派が推定約5000万人もいる。

 トランプ氏は2020年大統領選での再選に向けて、ユダヤ票の取り込みや、ユダヤマネーの取り組みを狙っている。全米トップ大富豪(個人資産25億ドル=約2800億円=以上)100人のうち31人はユダヤ人である。特に、先の大統領選挙では、ラスベガスの「カジノ王」のシェルドン・アデルソン氏から2000万ドル(約22億3900万円)の献金を受けている。アデルソン氏は共和党支持者で、ネタニヤフ首相とも親密な関係を持つ。

 国際政治の裏は複雑である。米国の外交政策はイスラエルの動向を抜きには考えられない。トランプ氏の露骨な「イスラエルシフト」で今、中東情勢の雲行きが非常に怪しくなっている。

 ■川上高司(かわかみ・たかし) 1955年、熊本県生まれ。拓殖大学海外事情研究所所長。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。著書に『「新しい戦争」とは何か』(ミネルヴァ書房)、『トランプ後の世界秩序』(東洋経済新報社)など。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ