北朝鮮の飛翔体は「弾道ミサイル」 米国防総省が断定

 【ワシントン=黒瀬悦成、ソウル=桜井紀雄】米国防総省は9日、北朝鮮が同日に発射した短距離ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体について「複数の弾道ミサイル」だと断定した。北朝鮮の朝鮮中央通信は10日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が9日に「前線・西部前線防御部隊」の火力打撃訓練を指導したと報じた。金氏が「長距離打撃手段」の訓練計画を把握した上で訓練開始を命じたという。

 韓国軍によると、9日午後に北朝鮮北西部の平安北道(ピョンアンプクト)・亀城(クソン)から短距離ミサイルとみられる2発が発射された。推定で高度約50キロに達し、東方に約420キロと約270キロ飛行して日本海に落下した。米国防総省の声明によれば、ミサイルは東に300キロ以上飛行して海上に落下した。弾道ミサイルの発射は、国連安全保障理事会決議違反で、北朝鮮の非核化に向けた米朝交渉に影響する恐れがある。

 朝鮮労働党機関紙の労働新聞は10日、炎を噴き出して垂直に打ち上がる飛翔体の写真を掲載。4日に日本海側で「戦術誘導兵器」と称して発射したものと同種のミサイルとみられる。米韓の専門家は、ロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を改良し、昨年2月の軍事パレードに登場した新型と分析している。

 イスカンデルは、低高度と複雑な軌道が特徴で、在韓米軍のミサイル防衛システムでも迎撃が難しいとされ、韓国の安全保障を脅かす可能性がある。一方で、国際社会は過去、短距離にとどまる弾道ミサイルの発射に対しては、追加制裁といった強い行動を示してこなかった。北朝鮮は前回4日の発射について防衛のための「正常な軍事訓練」と主張。米韓も非難を抑えたため、距離を延ばしての新たな発射で国際社会の出方を探ろうとしたようだ。

 金氏は「数日前の東部前線防御部隊」の訓練と比べても(そんしょく)ないとして、満足の意を示し、「国の真の平和と安全は自主権を守護できる強い物理的力でのみ保証される」と強調した。

 トランプ米大統領は9日、ホワイトハウスで記者団に対し、北朝鮮が発射したのは「短距離ミサイルだった」とした上で「誰もうれしくない」と述べ、不快感を示した。「北朝鮮は交渉を望んでいるが、交渉の用意ができているとは思わない」と語る一方、「北朝鮮は経済面で絶大な潜在力があり、(金氏が発展の機会を)台無しにするとは考えられない」と指摘した。

 弾道ミサイル ロケットエンジンで一定の高さまで上昇した後、放物線を描きつつ自然落下で目標に到達するミサイル。低空を飛行機のような軌道で飛び、小型で捕捉されにくい巡航ミサイルと異なり、核・化学兵器などの重量物の搭載が可能。国連安全保障理事会は北朝鮮の弾道ミサイル計画に関わるすべての活動の停止を求める決議を採択している。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ