北改憲の狙いは…正恩氏が「主席」と同等に、外交攻勢への布石か

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は29日に国会に当たる最高人民会議を開き、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が兼務する国務委員長の権限を強化する憲法改正を行った。建国者の祖父、金日成(イルソン)が就いた「主席」と同等か、外交面ではそれ以上の権限が付与されたとも分析され、米朝交渉を越えた外交攻勢の布石の可能性がある。

 「国家事業全般への(金正恩)最高指導者同志の唯一指導を確固として保証できるようになった」。29日の最高人民会議で崔竜海(チェ・リョンヘ)常任委員長はこう報告した。

 今回の改憲で、国務委員長に法令や重要な政令、決定を公布する権限が加わった。かつての国家元首である主席が行っていたもので、韓国の世宗(セジョン)研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)研究企画本部長は「金日成時代の主席に一層近づいた」との見方を示す。

 さらに注目されるのは、外国に駐在する外交代表の任命や解任の権限も得たことだ。主席にもなかった権限で、鄭氏は「外交を直接仕切るという金委員長の意志を示した」と分析する。

 消息筋によると、正恩氏は以前、在外公館に指示し、大統領など外国での元首の扱いを研究させてきたという。父、金正日(ジョンイル)総書記は、日成を「永遠の主席」にまつり上げ、自分は非常体制の国防委員会トップとして政治に当たった。対外的な元首役は同会議の金永南(ヨンナム)常任委員長が担った。

 国家元首でなければ、国際会議で儀典的に中心の位置を占められない。正恩氏は1月、朝鮮戦争の休戦体制を平和体制に転換するための多国間協議の積極推進に言及している。4月の改憲で国務委員長を「国家を代表する最高指導者」と位置付けており、2段階に分け、中国なども巻き込んだ外交攻勢に備えた法的根拠を準備したといえる。

 ただ、他国の大使の信任状を受ける儀典面での元首の役割は同会議常任委員長に残ったようだ。「正常国家」を目指した改憲で「永遠の主席」と実質的元首、儀典的元首という3人の国家代表が並列した結果を、エバラード元駐朝英国大使は「正常国家とはかけ離れた逆効果を生んだ」と韓国紙のコラムで指摘した。

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