米イラン直接対話の可能性 「緊張緩和」に市民期待感

 【テヘラン=佐藤貴生】トランプ米大統領が9日、今月下旬に国連総会出席のために訪米するイランのロウハニ大統領と直接会談する可能性について、「会うことに何の問題もない」と述べた。米国の対話姿勢に、イランの首都テヘランでは「危機は遠のいた」とみる向きが多い。ただ、ロウハニ師が会談実現の前提として求める米国の制裁解除は見通せず、市民は先の見えない対立の中で「せめて戦争は回避してほしい」と期待を込めている。

 「戦争は起きないだろう。トランプ氏は実業家の目線で何が国益になるかと考えており、戦争を避けたいのが分かる」。テヘランの繁華街で7日、携帯電話ショップを営むアクビルさん(47)がいった。

 米国は5月、B52爆撃機や空母打撃群を中東に派遣し、イランへの軍事的圧力を強化した。6月にはイラン革命防衛隊による米無人機の撃墜や、何者かによるホルムズ海峡周辺でのタンカーへの攻撃が相次ぎ、緊張がさらに高まった。

 その一方でトランプ氏は「イランと戦争はしたくない」とも語っている。イランの市民には、その言葉を額面通りに受け止めたいとの心理がある。

 ただ、このところ目立った軍事的事件は起きていないものの、米国は「イランの核保有を阻止する」ためだとして、昨年のイラン核合意離脱後に再発動した経済制裁を継続したままだ。書店経営のアーデシールさん(60)は「米国との間で外交が機能していないことが問題だ」とみる。

 人々に染みついた米国への不信感も変わらない。女性のショホレさん(36)は「生まれてから対米関係がうまくいった時期などみたことがない。米大統領は信用しない」と話す。多国間の枠組みである核合意を一方的にほごにした米国への嫌悪も、イラン側の偽らざる本音だ。

 経済誌のハキフィルーズ編集長(41)によると、最近の緊張緩和ムードの中で、食品や日用品を買い求める人が市場に殺到する場面はなくなった。だが、春以降は製造業を中心に借りた資金が返済できない事例が相次いでいるといい、米制裁で悪化したイラン経済は低迷が続く。

 経済回復の主役であるべき製造業の「窒息状態」が続くイラン。ハキフィルーズ氏は「戦争への危機感が弱まり、イラン経済は何とか生き延びられる可能性が出てきたが、このままでは経済成長はあり得ず、規模が縮小していくばかりだろう」と力なく語った。

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