イランは「ボルトン氏抜き」のトランプ政権を見極める

 サウジアラビアの石油施設攻撃は、トランプ米政権で対イラン最強硬派のボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任され、トランプ大統領がイランとの直接会談を模索し始めた直後に起きた。犯行声明を出したイエメン武装勢力を支えるイランからみれば、「ボルトン氏抜き」の米政権の反応をみる絶好のタイミングだ。イランの直接的関与の有無は不明ながら、同国はこうした事件を米国との駆け引きに利用するものとみられる。

 トランプ氏がこのところ、北朝鮮の短距離ミサイル発射を許容するなど「対話」と「取引」に傾斜していることから、イランは、自国にもこれと同様の姿勢をみせるのか測っているとも考えられる。

 イランにとり、自国の体制転換さえ主張するボルトン氏は、やっかいな存在だった。同国のザリフ外相らが、ボルトン氏らタカ派を「Bチーム」と呼んで批判してきたことからも、それは明らかだ。

 イランの安全保障の基本政策は、(1)弾道ミサイル開発などで周辺国を牽制し、(2)中東域内の武装組織を支援して勢力圏を拡張することにある。

 これに対しトランプ政権は、昨年5月のイラン核合意からの離脱以降、イランにミサイル開発や他国への干渉政策を放棄するよう迫り、軍事・経済圧力を強めてきた。こうした路線を主導したのもボルトン氏だ。

 しかしトランプ氏は、今月10日にボルトン氏を更迭し、ロウハニ師との直接会談に強い意欲を示し始めた。米政権が制裁緩和を協議したとの報道も出た。イランからみると、図らずも「邪魔者」が消え、相手が歩み寄ってきた格好だ。

 イランにとって問題は、ボルトン氏の退場で生じた米国の柔軟姿勢が本物なのか否かだ。今回のような事件は、米国による軍事力行使の可能性などを判断する好材料となる。

 イランで武装組織支援などを担うのは、反米強硬派の“牙城”である革命防衛隊だ。米国が対話に前のめりだと認識すれば、それにつけ込む形で活動を活発化させる可能性もある。(前中東支局長 大内清)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ