「照準」はトランプ氏…協議合意直後に冷や水は「試金石」 北ミサイル

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は2日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と推定されるミサイルを発射し、前日に米朝実務協議の開催を発表することで演出した対話ムードに冷や水を浴びせた。一見、チグハグに思える北朝鮮の言動の裏には、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長特有の計算があり、トランプ米大統領に照準を絞っているとみられる。

 「実務協議に臨む準備ができている。協議を通じて朝米関係の肯定的発展が加速することを期待する」

 北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官は1日、米側と実務協議の5日実施で合意したと発表した談話でこう強調した。対米外交の責任者で、2月の米朝首脳会談の物別れ直後から金正恩氏の報道官役をしてきた崔氏がミサイル発射について全く知らなかったとは考えにくい。

 崔氏が9月9日に米側との討議の用意があると表明した翌10日にも北朝鮮は事実上の短距離弾道ミサイルの発射を強行。今回と同じパターンで、意図的と言わざるを得ない。

 それを読み解く鍵は北朝鮮が最近出した2つの談話にある。1つは外務省顧問として金桂寛(キム・グァン)前第1外務次官が9月27日に発表した談話だ。金桂寛氏は、米国内で北朝鮮に先に核放棄を迫る主張が根強く、今後の米朝首脳会談の「展望は明るくない」と懸念を示しつつも、トランプ氏を「前任者らとは異なる政治感覚と決断力を持つ」とたたえ、「賢明な選択と勇断に期待をかけたい」と表明した。

 2つ目は、実務協議の北朝鮮側首席代表に決まった金明吉(キム・ミョンギル)前駐ベトナム大使の9月20日の談話だ。トランプ氏が対北強硬派のボルトン氏を大統領補佐官から解任したことを「厄介者が消えた」とし、「賢明な政治的決断を歓迎する」とトランプ氏を持ち上げた。

 つまり、金正恩氏との関係の良好さを繰り返し強調してきたトランプ氏なら金正恩氏の立場を理解するだろう-との主張だ。今回の発射がSLBMなら米国への脅威が増すにもかかわらず、短距離ミサイルの発射を容認してきたトランプ氏なら協議を優先するはずだというある種の楽観が読み取れる。今回の発射をトランプ氏の今後の出方を占う“試金石”としたわけだ。

 半面、米朝両首脳の関係だけに頼るというトップダウンに完全に依拠した形で、今後、実務協議が開かれても議題を詰め切れず、2月の首脳会談の失敗が再演される危険性も浮かぶ。

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