イラン「無制限でウラン濃縮」 核合意瀬戸際、米との緊張高まる 米「攻撃なら大規模反撃」

 【ベイルート=佐藤貴生、パリ=三井美奈】イラン政府は5日、欧米など6カ国と2015年に結んだ核合意の履行を停止する第5段階の措置として、無制限にウラン濃縮を行うと表明した。高濃縮ウランは核兵器への転用が可能で、昨年5月に核合意の段階的履行放棄を表明して以来、最も重大な内容だ。イラン核合意は崩壊の瀬戸際に立たされた。

 イランをめぐっては米軍が3日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官をイラクで殺害し、イランが報復を警告していた。トランプ米大統領は5日、イランの攻撃には「大規模な反撃を行う」と述べた。イランが核合意の骨抜きを明確にしたことで、米イラン関係の緊張は一段と強まりそうだ。

 イラン政府の声明は国際原子力機関(IAEA)との協力は継続するとしており、欧州などに警告していた査察受け入れの一部停止は見送られた。米政権が核合意を離脱して再開した対イラン制裁を解除すれば、速やかに合意の枠内に復帰できるともしている。

 ただ、声明はウラン濃縮に使う遠心分離機の数や濃縮度、濃縮ウラン製造量などについて一切の制限を受けないと強調しており、核合意の有名無実化が一気に進むのは確実だ。

 核合意当事国であるフランスのマクロン大統領と英国のジョンソン首相、ドイツのメルケル首相は5日、共同声明を出し、イランに「全ての暴力行為」を慎み、核合意を順守するよう要求。事態沈静化に向けて全関係国に自制を求めた。

 イランは昨年5月、核合意で規定された金融や原油分野での経済取引を英仏独が維持していないとし、60日ごとに段階的に履行義務を放棄してきた。

 昨年7月には核合意で定められた濃縮度3・67%をわずかに超える約4・5%のウランを製造。11月には、中部フォルドゥの山間部近くにある地下核施設でウラン濃縮に着手した。濃縮度を20%まで高めると、核兵器級の90%の高濃縮ウラン製造が容易になる。イランは11月、初期型に比べて10倍の速度で濃縮できる遠心分離機「IR6型」の増設を確認していた。

 イランの影響力が増している隣国イラクでは5日、イスラム教シーア派主体の国会が、米国など外国軍部隊の駐留終了を求める決議を採択した。

 米軍がイラクでソレイマニ司令官を殺害したのは主権侵害だとの声が強まり、米政権への反発が広がりをみせている。

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 イラン核合意 2002年に浮上したイランの核開発疑惑をめぐり、米英独仏中露の6カ国とイランが15年7月に結んだ合意。イランが濃縮ウラン貯蔵量や遠心分離機の削減などを受け入れる見返りに、米欧は原油取引の制限といった核関連の制裁を解除した。米国のトランプ政権は18年5月、オバマ前政権が主導したこの合意には欠陥があるとして離脱し、対イラン制裁を再び発動した。

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