イラン、イスラエル攻撃示唆 シーア派の弧で米国からむ大規模紛争も

 【ベイルート=佐藤貴生】イラン革命防衛隊は8日、国営メディアを通じて「シオニスト体制(イスラエル)は犯罪国家の米国と一体だ」とし、攻撃対象に含まれると示唆した。イスラム教シーア派大国のイランはパレスチナ問題の原因を作ったとして米の同盟国イスラエルを敵視し、周辺国の民兵組織と連携して「シーア派の弧」と呼ばれる親イラン勢力を構築してきた。イスラエルが攻撃されれば米国を巻き込む大規模紛争に至る懸念がある。

 イランはイラクの「人民動員隊」(PMF)の一部やレバノンの「ヒズボラ」などのシーア派民兵組織に資金や武器を供与。2011年のシリア内戦発生以降は、革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」が現地入りしてアサド政権を支援し、軍事拠点を建設したとされる。米軍に殺害されたコッズ部隊のソレイマニ司令官はその中心人物だった。

 イラク、シリアをへてレバノンに至る親イラン勢力のネットワークが「シーア派の弧」だ。革命防衛隊の元司令官は昨年、取材に対し、この戦略について、「周辺国の民兵組織支援はイランの安全保障戦略の根幹だ。イランが攻撃にさらされればこうした組織が米軍やイスラエルを襲撃する」と語っていた。イランは特にイスラエルに隣接するシリアとレバノンに布石を打ってきた。

 ヒズボラの指導者ナスララ師は5日、殺害されたソレイマニ司令官を追悼する首都ベイルートの式典で、中東の駐留米軍に「公平な処罰」を与えると強調し、「自爆テロの候補者は多数いる」と威嚇した。

 シリアにいるコッズ部隊やシーア派民兵組織とヒズボラが同時に攻撃を仕掛け、イスラエルに二正面作戦を強いたり、核関連施設を攻撃したりする狙いがあるとも指摘される。中東最強の軍を持つイスラエルのネタニヤフ首相は対イラン強硬派で、攻撃を受ければ報復することは必至だ。

 イランと連携する組織はこれだけではない。イエメンのシーア派系民兵組織フーシ派は、15年から軍事介入しているサウジアラビアと戦闘を展開。フーシ派は米国の同盟国であるサウジのタンカーや石油パイプラインを攻撃してきたとされ、サウジは多額の戦費拠出に悩まされている。

 親イラン勢力は、米国が中東政策の軸足を置く国に張り付くように配置されている形で、事態の推移によっては戦闘が飛び火する可能性は否定できない。

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