露「戦勝国」誇示で強硬 真摯な領土交渉は期待薄

 【モスクワ=小野田雄一】第二次大戦の終結から75年の節目である今年、ロシアは日本との北方領土交渉で強硬な姿勢をとり続ける公算が大きい。プーチン露政権は「戦勝国」の地位を政治宣伝に利用し、政権の求心力向上につなげてきた。ロシアは今年、「戦勝75年」の大規模なイベントを予定しており、北方領土が「大戦の結果としてロシア領になった」との主張を弱めることは考えづらい。

 プーチン露大統領と安倍晋三首相が「平和条約交渉の加速」で合意した2018年11月以降、ロシアは一貫して高飛車な態度をとってきた。プーチン政権は「大戦の結果を日本が受け入れること」が交渉の前提だと主張し、日米安全保障条約が交渉の障害だとの認識も繰り返してきた。

 もはや領土交渉の体を成していないのが実情だ。露科学アカデミー極東研究所のキスタノフ日本研究センター長は「日本が受け入れられないことを百も承知でロシアは要求を突き付けている」と指摘する。

 ロシアの強硬姿勢の根底には米中対立の激化がある。ロシアは中国との関係を準軍事同盟の水準まで深める一方、日本を「米国の同盟国」と認識する傾向を強めている。

 ロシアが「政治の季節」に入ったことも見通しを暗くする。プーチン氏は1月、唐突に権力機構を変更する憲法改定に着手した。24年に大統領任期が終わった後も実権を保持するための動きとみられる。その成就には政権が求心力を維持していることが不可欠で、北方領土問題で「弱腰」を見せるのは難しい。

 ロシアは5月9日の対ドイツ戦勝記念日を最も重要な祝日と位置づけ、08年からはモスクワの「赤の広場」で大規模な軍事パレードを行ってきた。「ロシアは欧州をナチスから解放した偉大な戦勝国だ」といった政治宣伝を盛んに行い、異論を唱える外国や国内知識人を敵視して国民の団結につなげてきた。

 戦後75年の今年はとりわけ宣伝が強まり、ナチス・ドイツと「軍国主義日本」を同列視する傾向にも拍車がかかりそうだ。

 安倍首相が5月9日の対独戦勝式典に招待されていることについて、モスクワ国際関係大のストレリツォフ東洋学部長は「領土獲得の合法性の確認を求めるロシアと、領土返還を求める日本の立場は根本的に異なっている。仮に式典に出席しても歩み寄りは困難だろう」とみている。

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