メルケル独首相の「禅譲」白紙 与党党首の辞意がEUの不安材料に

 【パリ=三井美奈】ドイツで中道右派与党「キリスト教民主同盟」(CDU)のクランプカレンバウアー党首が10日、辞意を表明したことで、来年秋に任期を終えるメルケル首相の「禅譲シナリオ」が白紙になった。欧州連合(EU)最大国ドイツで政局混迷が避けられなくなり、EUには英国離脱に続く不安材料となった。

 クランプカレンバウアー氏は10日、ベルリンでの記者会見で、「首相と党首の分離は党を弱める」と述べた。年末に予定される党大会まで留任し、首相候補兼新党首を決めた後に辞任する方針を示した。

 同氏の発言は、党内の権力分散が、党首としての主導権発揮を妨げたという思いに根差す。18年12月の党首就任後、国防相に起用されたものの、首相の影で「ミニ・メルケル」と呼ばれ、支持率は低迷を続けた。メルケル氏は10日、党首の辞意表明は「残念だ」と述べた。

 新党首の候補には、メルケル氏に批判的な保守派のメルツ元連邦議会(下院)院内総務、ノルトライン・ウェストファーレン州首相で中道派のラシェット副党首らの名前があがっている。ラシェット氏は、メルケル氏に路線が近い。

 独民放テレビRTLが10日に発表した世論調査では、メルツ氏の支持率は27%、ラシェット氏は18%。「首相候補はいない」とする意見が、36%で最も多かった。15年間政権を率いたメルケル氏に代わる有力候補が見当たらないのが現状だ。今月初めの調査で、メルケル氏の支持率は53%にのぼった。

 政局の混迷は、EU各国で進む多党化がドイツにも波及したことの表れだ。

 移民排斥を訴える右派「ドイツのための選択肢」(AfD)の台頭に続き、環境政党「緑の党」が勢いづき、大連立を組むCDU、中道左派「社会民主党」(SPD)はともに退潮が著しい。SPDは昨年12月、「最低賃金引き上げ」を求める党内左派が共同党首に就任し、連立内の政策合意は一層難しくなった。

 メルケル氏のレームダック化が長引けば、EU最大国ドイツの進路が定まらず、英離脱後のEU再建の足かせになりかねない。

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