日系企業、従業員対策に腐心 国安法施行1カ月

 【香港=藤本欣也】香港の日系企業も香港国家安全維持法(国安法)と無関係ではいられない。香港に事務所を構える日系企業は外国企業で最多の1413社(昨年10月、香港政府発表)。適用範囲が広い国安法に頭を悩ませている。

 外国企業にとって国安法の主な懸念材料には以下のようなものがある。

 (1)企業や団体も国安法の適用対象で、刑事罰を受ければ営業停止となる(2)外国人も対象で、香港以外でも罪に問われる(3)国家安全に関して海外勢力との結託が禁止されているが、何が犯罪行為なのかあいまいで、香港人従業員に心理的負担を与えかねない-など。

 さらに、中国が条文解釈権をもつ国安法が香港の他の法律より優先されるため、「公正な裁判を期待するのが難しい」(日系企業経営者)との不安が重なる。

 日系企業608社が加盟する「香港日本人商工会議所」では7月中旬、加盟社を対象にオンラインによる国安法のセミナーを行った。日本人弁護士による解説と質疑応答が主な内容で、参加登録者数は過去最高の352人を記録した。

 質疑応答では「中国の金融政策を非難するようなリポートを発表しても大丈夫か」「反政府デモの参加者が自社製品を使って破壊活動を行った際、テロ支援の罪に問われないか」といった疑問が寄せられた。

 弁護士からは「中国当局も当面、香港の経済的地位に悪影響を与える事態は望んでいないのではないか。そこまで心配する必要はないと思う」といったアドバイスがなされた。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)などが香港の日系企業を対象に7月上旬に行った調査でも、国安法への懸念を表明した社は81%に上っている。

 食品関係の企業経営者に取材をすると、「香港人従業員のケアが大切になってくる」という。企業側としては、従業員の言動について「やめなさい」とは命令できない。香港基本法(ミニ憲法)にも言論、デモの自由が明記されている。一方で、「香港人従業員が国安法違反容疑で逮捕されれば、自社にどんな影響が及ぶのか分からず、対応が非常に難しい」と指摘する。

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