【主張】雇用助成金の特例 安全網の機能縮小するな

 雇用情勢が再び悪化する兆しをみせている。

 新型コロナウイルス禍に伴い、東京、大阪などで緊急事態宣言が延長された。経済活動に対する制限も長期化しており、失業増などに備える必要性が高まっている。

 それだけに雇用の安全網である雇用調整助成金の機能を拡充すべきである。今月末で一部地域で切れる予定の特例措置を延長するだけでなく、利用者の急増で悪化している雇用保険財政に対する政府支援も欠かせない。

 とくに民間企業の間では、出向元との雇用関係を維持しながら出向先で働く「在籍型出向」が拡大している。政府にはこうした雇用確保の取り組みを継続的に支援することで、雇用情勢の悪化を食い止めてもらいたい。

 厚生労働省によると、昨年度平均の有効求人倍率は前年度比0・45ポイント低下して1・10倍となった。この下落幅は石油危機の影響が続いていた昭和49年度以来、46年ぶりの大きさだ。総務省がまとめた昨年度平均の完全失業率も2・9%と11年ぶりに悪化した。

 とくに宿泊・旅行業や飲食業での悪化が目立つ。これらの業種は地方の中小・零細企業が多く、雇用の確保が厳しくなっており、今後の失業増が懸念されている。そうした中では雇用を維持した企業に支払う雇用調整助成金が果たす役割は大きい。

 コロナ禍の拡大に伴って政府は昨春以降、助成金の上限額を増やしたり、助成率を拡大したりする特例措置を延長してきた。緊急事態宣言の対象となっていない地域では今月末で特例措置を一部縮小する予定だが、失業増を防ぐためには着実な延長が不可欠だ。

 助成金の利用者が急増し、雇用保険財政は悪化している。助成金の一律支給は円滑な労働移動を妨げるとの批判も根強い。だが、コロナ禍の収束が見通せない中で、雇用安全網の機能を縮小することは適切とはいえまい。

 東京商工リサーチの調査では、今年3月末までの1年で雇用調整助成金を活用した上場企業は700社を超え、利用額も3600億円を突破した。こうした企業では在籍型出向が拡大しており、雇用維持につながっている。

 それだけに政府は場当たり的な特例延長を繰り返すのではなく、雇用維持に向けた中期的な支援方針を明示すべきだ。

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