【外信コラム】ワクチン、いまや戦略物資 日本はEU頼み

 欧州連合(EU)は、新型コロナウイルスワクチンを世界約90カ国に供給している。輸出先トップは日本で、全体の4割を占める。EUがワクチン不足で大騒ぎしたことを思うと、複雑な気持ちになる。

 EUは1月、工場生産が間に合わず、必要分が確保できなくなった際、輸出を許可制にしてメーカーに圧力をかけた。だが、EUはワクチンの公平な分配を唱道してきた手前、輸出を止めるわけにもいかない。そこで域内増産に向け、製薬会社に協力を求めた。米国やドイツのワクチンメーカーの「下請け」だ。

 フランスでは少なくとも4社が、瓶詰めや材料加工を担う。まるで戦時中の工場接収。競合他社の下請けをさせられる経営者の心境はいかばかりかと思うが、マクロン大統領は「年内に2億5千万回分が製造できる」と誇った。国民はコロナ禍で強権発動に慣れたらしく、批判は全くない。

 ワクチンは、いまや戦略物資になった。米国は国内分確保に向けて、「国防生産法」を発動した。朝鮮戦争時の1950年、軍需物資増産のために制定された法律だ。

 日本のワクチンは目下、EUが頼み。対日輸出が認められたのは7200万回分で、EUで65歳以上の8割が接種できる量に相当する。日本は、欧州の死に物狂いの努力に支えられている。(三井美奈「パリの窓」)

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