【ニュースの核心】G7vs中国「ワクチン戦争」激化! 恫喝する共産党政権、自由主義陣営拡大の契機 日本は同盟国に「覚悟と行動」示せ

 自由主義諸国と中国共産党政権の対立が激化している。ロンドンで開かれた先進7カ国(G7)外相会合は、軍事的覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を強く牽制(けんせい)し、台湾を含む東・南シナ海情勢や人権問題に深い懸念を表明した。これに対し、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は6日、「生死を懸けて闘おうとすれば必ず悪夢を見る」と恫喝(どうかつ)する社説を掲載した。両陣営が展開する「ワクチン戦争」と、沖縄県・尖閣諸島を抱えて、同盟・友好国から「覚悟と行動」を求められる日本。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が考察した。

 G7外相会合は5日、台湾問題などで中国を強く牽制する共同声明を採択して、閉幕した。

 日本を除くG7各国は先に、新疆ウイグル自治区の人権弾圧問題で中国に対する制裁に踏み切ったが、今回、新たに台湾問題でも7カ国の結束を示した。「中国包囲網」は急速に拡大している。

 共同声明は「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。この表現は、4月の日米首脳会談の共同声明と同じだ。

 一方、中国当局によるウイグル人への人権弾圧については、「人権および基本的自由を尊重するよう求める」と書いた。そのうえで、強制労働や強制不妊手術について実態を把握するために、国連人権高等弁務官の現地入りを要求した。

 日米首脳会談(4月16日)の共同声明が、「香港および新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」と記すにとどまったのに比べて、こちらは一歩も二歩も踏み込んでいる。

 欧州諸国には「ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害」の記憶が残っているだけに、強い懸念を抱いているに違いない。

 今回の外相会合は、6月11日から英コーンウォールで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)の下敷きになる。中国が引き下がるとは思えず、各国の対中批判は強まりこそすれ、衰えることはないだろう。中国は明らかに追い込まれている。

 さて、こうなると、中国はどう動くだろうか。

 外交上の切り札は、途上国や新興国に対する「ワクチン外交」だ。中国製ワクチンを格安あるいは無償で提供して、見返りに相手国の港湾や空港を人民解放軍が自由に使えるようにしたり、国際機関での中国人登用を支持してもらう、といった取引である。

 だが、中国製ワクチンについては、安全性や有効性に対する懸念が強まっている。専門家によれば、中国製ワクチンを使った南米で「四肢の麻痺(まひ)が起きた」という副反応の報告が出ている、という。

 3月にオンラインで開かれた日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国による戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」は、中国のワクチン外交に対抗して、米国が開発したワクチンをインド太平洋地域の途上国に提供することで合意した。中国に傾きかけた国が、自由民主主義国の陣営に寝返る契機になるだろう。

 心配なのは、日本だ。

 日本はG7で中国にもっとも近く、かつ経済的な関係が深い。大手企業を中心に、経済界は中国に対する脅威認識が強いとも言えない。それが、中国に対して腰が定まらない大きな理由だ。

 尖閣諸島が日常的に中国の脅威にさらされているのに、政府は無人のまま放置している現状が煮え切らない姿勢を象徴している。これでは、いずれ米欧から「日本はどうするつもりか」と問われる局面が訪れるに違いない。来年冬の北京冬季五輪ボイコット問題が、その1つだ。

 菅義偉政権は「対中戦略の見直し」作業に早急に着手する必要がある。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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