【ソウルからヨボセヨ】「日本不信」の向こうに

 週末、単身赴任の寂しさを紛らわせるべく、一人でビリヤード場に入った。球を落とす穴がない台を使った独自ルールの「四つ球」は韓国娯楽の代表だが、何年たっても上達しない。

 悪戦苦闘していると、遠くの台にいたほろ酔いのサラリーマン風2人組の1人が、テレビのニュースに目をやりながら怒り出した。「ワクチンなんて打たないし、親にも打たせられない」。動画サイトのユーチューブで入手したという「ワクチンの危険」情報をとうとうと語っていた。

 韓国では60~74歳のワクチン接種予約が今月前半に始まったが、予約を済ませたのは5割程度。韓国政府は繰り返し「安心」を強調するが、ネット上では副反応をめぐる未確認の情報が拡散され続けている。

 日本滞在経験が長い大学教授は「韓国では独裁政権などで事実の歪曲(わいきょく)が繰り返されてきた。政府、大手マスコミなど『権力』が発する情報への不信感は、日本とは次元が違う」と話す。

 テレビはその後、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出の問題を報じた。日本に丁寧な説明が求められるのはもっともだが、韓国での強い懸念を払拭するのは困難だろう。「政府が真実を発表するわけがない」。彼らの視線の向こうには、数十年積み重なった自国政府への不信感があるのだから。(時吉達也)

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